これまでは、ワイヤレスヘッドホンには「無線接続やノイキャンは便利だけど、音質を重視するならやっぱり有線ヘッドホンでしょ」なんて思ってました。ただ、近年のワイヤレスヘッドホンの進化は目を見張るものがあり、「もはやそんな区別を気にしなくていいんじゃないか」と思わせてくれるモデルが次々と登場しています。
ゼンハイザーの超本気ワイヤレスヘッドホンシリーズ「Momentum 5 Wireless」もまさにそれです。
約4年ぶりにモデルチェンジを迎えた名機。今回はゼンハイザーより先行でサンプルを送っていただきしばらく使ってみたので、音質や機能面などレポートしていきます。
◼︎Momentum 5 Wireless
Momentum Wirelessといえば、ファブリック調のヘッドバンドをはじめデザインがとにかく良いんですよ。前作のハウジングの溝がなくなりフラットな形状になっていて、いっそう洗練された印象です。

わかりやすい部分では、矩形状だったロゴが円形のスピンリングロゴに変わってます。パっと見て4と5を見分けるポイントはここですかね。

大きくなった外向きマイク。個人的にはマイク部は極力目立たないデザインが好みなのですが、今作に限ってはこのシルバーの光沢と「Momentum 5」の印字が明確にアクセントになっています。

ファブリック調のヘッドバンド内側は、シリコンカバーのクッション構造。頭頂部を包み込むように装着できるのも前モデルゆずりです。

イヤーパッドはヴィーガンレザ―(人工皮革)で相変わらずモッチモチ。このシリーズはずっとイヤーパッドの装着感が高く評価されていますが、今作もそこはしっかり踏襲していて、絶妙のパッド圧が心地良い。

ハウジング下部のインターフェース。前作と仕様は大きくは変わらず、右ハウジングに2.5mmオーディオ端子、USB-C端子、LEDインジケーター、電源兼ペアリングボタンが備わっています。

今作も折りたたみはできず、ハウジングをくるっと水平にできるだけなんですが、キャリーケースは前作と比較して約20%薄型化されていてカバンに入れてもかさばりにくくなりました。このキャリーケース、かなり堅牢な作りで上から強めに圧力をかけても、まったく凹みません。

バッテリーはノイキャンONで最大約57時間。取り外しできるので、長期使用後のバッテリー交換も可能。ヨーロッパの法規制への対応を意識してのことだそう。

ノイキャンが強化されている(後述)のに、バッテリー時間はほぼ据え置き。ぼくは普段から移動中にノイキャンヘッドホンを装着することが多いので嬉しい仕様です。例えばノイキャン王者「WH-1000XM6」はノイキャンONでバッテリー時間が30時間ですから、こうみるとMomentum 5 Wirelessの57時間はかなり頼もしい。
使用感

快適性と密閉感を両立した装着感
まずMomentum 5 Wirelessの装着感ですが、相変わらず至高です。
側圧と密閉感の加減が絶妙なので、作業時や移動中など2、3時間つけっぱなし、みたいな環境でもまっったく不快感なく使えます。毎回思うことですが、ヘッドバンドとイヤーパッドのクッション性とスムーズな肌触りが本当に心地良いんですよね。

首を傾けるようなシーンでも一切位置ズレすることなく、それでいて耳あたりもこの上なく優しい。長時間ストレスフリーで使えるヘッドホンという点でMomentum 5 Wirelessはかなり優秀です。
前作からそうですが、ハウジングが両方向に回ってくれるおかげで、装着位置を微調整しやすいのが良いんですよね。
また、ヘッドホンの着け外しで自動再生/停止されるスマートポーズのレスポンスも良く、着けた瞬間に音楽が始まり、外した瞬間にほぼ音漏れすることなく停止してくれるので音楽再生時の快適性はいうことなしです。
妥協なき音質に、パワフルなノイキャン
さすが4年ぶりのMomentum Wireless新作。同価格帯のフラッグシップモデルと比較しても音質は頭一つ抜けているなと…。
前後左右に広がる音場と、自然な立体感といった前作の長所はそのままに、各帯域のカドが取れてより全体的な音のつながりがなめらかになった印象です。これぞリスニング用途向けの王道といった感じ。どこまでもクセのないニュートラルなサウンドです。

前作は低域のアタック感がかなり強めだったイメージですが、明らかにマイルドになって聞き疲れしにくくなったと感じますね。ぼくは打ち込み系のキック音やサブベース、バンド系だとバスドラムやタムのドコドコみたいな低音の臨場感が破綻しない範囲の最大限ほしい派なので、常時バスブーストONです。
それでいて高域の粒立ちも良く、ハイハットやアコギの弦の音も引っ込むことなくちゃんと共存してくれます。以前レビューした上位機種のHDB 630ほどの繊細さはさすがにないですけど、Momentum 5 Wirelessは味気のある高域といった感じで絶対にバランスを崩さない本機の方が個人的に好みですね。
それから特徴的に感じたのが、ステレオの分離感がものすごく強いということ。通常のヘッドホンと比べて「Rチャンネル全振りの音が、本当にR側でしか鳴ってない」感覚がすさまじく強いです。この感覚がセンター位置のボーカルの定位感を際立たせているのかもしれませんが、反面、左右にきっちり音が振り分けられている楽曲(ジャズなど)は多少違和感を感じることがありました。
とはいえ、これぞゼンハイザーって感じで、音質面はさすがの実力です。EDMやヒップホップと高相性の従来のチューニングに加えて、今作は高域の表現力や解像度がアップしているおかげで一部ジャズの楽曲を除いてオールジャンルこれ一つでいけちゃいます。
そして、期待以上だったのがノイズキャンセリング。
マイク数が前世代から倍増し、合計8基すべてをデジタルマイクに刷新。中音域を中心としたノイズ低減性能は最大3倍に向上。ブランド史上最強を謳うだけあり、かなり高い遮音性を実現しています。

そもそもパッシブ遮音性が高いというのもあり、電車の走行音や日常のロードノイズはガッツリかき消してくれます。ワイヤレスヘッドホン最強水準とまではいかないにしろ、フラッグシップモデルの中でもノイズキャンセリング性能は頭一つ抜けているなと。
むしろ低域の騒音に対してそうとう優秀なので、公共空間では周りの状況に積極的に気をくばる必要があるかなと思います。反面、「通学や通勤時に決まった環境で習慣的に音楽を聴く」という人には、この上なく没入できるワイヤレスヘッドホンじゃないでしょうか。
あとこれはゼンハイザー機器で共通する良さですが、ノイキャン時のホワイトノイズの類が皆無なんですよね。無音の状態で付けていてもサーっみたいなノイズがのらないので、カフェでの作業時や屋外などでは音を鳴らさない耳栓的にも活躍してもらってます。
ハウジングのダブルタップで、再生中の音量をぐっと下げて外の音(特に人の声)を強調して取り込める外音取り込みも使いやすいです。個人的には物理ボタン操作より断然タップ派ですね。レジでの会計時などワンポイント的にかなり助かってます。
専用アプリ、マルチポイントの挙動
例によって専用アプリでイコライザー設定やカスタマイズを行えます。

7種類のEQプリセットの選択、イコライザー設定やタッチ操作の変更、3D Dolby Atmos設定、ファームウェアアップデートなどにくわえて、周りのノイズレベルに合わせてノイズキャンセリング量を調整する「アダプティブ」のON・OFFや、外音レベルの調整ができるアダプティブノイズキャンセレーションの設定もこのアプリ内で行えます。
なお、HDB 630にあったクロスフィード機能やパラメトリックイコライザーは搭載されていません。ここはHDB 630の専権みたいです。
iPhoneとパソコン、iPhoneとタブレットなど、2台のデバイスに同時接続できるマルチポイントにも対応。毎回ペアリングしなおさなくても、シームレスに端末間を行き来できます。

電源を切った後もちゃんと自動的にあらかじめ接続していたデバイスに2台とも接続されるのでストレスフリーで使えます。接続がブツブツ不安定になることもないですし、aptX AdaptiveやLosslessとの併用も問題ありません。
2026年、ハイエンドモデルの大本命

これもうシンプルに「最強のゼンハイザー」が出たってことですね。ノイキャン、ハイレゾ、Dolby Atmos、ロングバッテリー。どれもハイエンドモデルに求めたい要素ですが、余すところなく詰め込んでくれました。
4年越しの新作ということもあり、あらゆる点においてアップグレードが感じられましたね。個人的には音質とチューニングの改善、ノイキャンの強化が特に嬉しいポイントでした。
ゼンハイザーサウンドを静寂な空間で、あるいは外で、じっくりと堪能したい。「Momentum 5 Wireless」ならばそれが可能です。発売当初からMomentum 4 Wirelessを使っている方も、もう4年経過しているわけですから、このタイミングでアップグレードいかがでしょうか。


