ミニPCなどを手掛けるMinisforum(ミニズフォーラム)から、NPUをそなえるAMD Ryzen 7 260を搭載したミニPC「Minisforum AI X1」が登場しました。
既存のMinisforum AI X1 Proの弟分的なモデルですが、内蔵グラフィックスとしてハイエンドクラスのRadeon 780Mが利用できる上に、OcuLinkポートを使って外部グラフィックスカードも接続できるモンスターマシン。今回は、Minisforumから32GB/1TBモデルが送られてきたので試用レポートをお届けします。
Minisforum AI X
旧Mac mini的なサイズ感で、ミニPCとしては少し大きめだったAI X1 Proからずいぶんコンパクト、軽量になったAI X本体。

選べるプロセッサはRyzen 5 225、Ryzen 7 260、Ryzen AI 9 365。フラッグシップでもRyzen AI 9 365なので、AI X1 ProのRyzen AI 9 HX 370に劣りますが、その分サイズと価格は抑えられています。
メモリは32GBまたは64GB、SSDは1TB、Windows 11 Proまたはベアボーンと選択できる本機ですが、今回手元に届いたのはRyzen 7 260/32GB/1TB。主な仕様は以下の通りです。
製品名 | Minisforum AI X1 |
---|---|
CPU | Ryzen 7 260(8コア16スレッド、クロック最大 5.1GHz、キャッシュ L2: 4MB、L3: 16MB、TDP 45W/cTDP 35~54W) |
メモリ | 32GB(SO-DIMM/16GB DDR5-5600 2基/最大64GB) |
ストレージ | M.2 2280 SSD 1TB(NVMe対応) 2基(1基空き/OCuLinkと排他) |
グラフィックス | Radeon 780M Graphics/HDMI 2.1、DisplayPort、Type-C(USB4) ×2 |
ネットワーク | 2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4 |
インターフェイス | USB 3.2 Gen 2 ×2、USB4 ×2、USB 2.0、3.5mmジャック、OCuLink |
スピーカー | ◯ |
筐体 | 128×128×52mm、653g(実測) |
プロセッサはZen 4アーキテクチャのRyzen 7 260と2025年発表の最新モデルを採用。8コア16スレッド、クロックは最大 5.1GHz。キャッシュ L2: 4MB、L3: 16MB。TDPは45W(cTDP 35~54W)。また最大16 TOPSですがNPUも包含します。
メモリはSO-DIMM DDR5-5600MHz 16GB 2基の計32GBで、最大64GBまで対応。なお、フラッグシップのRyzen AI 9 365は64GBのみとなっています。加えてメモリは最大128GBであり、ストレージは、M.2 2280 SSD 1TB。M.2スロットが2つあるので後から増設もできます。
Copilotボタンや指紋認証センサーがカットされたほか、2つあった2.5GbpsのLANがひとつ減ったことなどAI X1 Proからリッチな機能が一部オミットされているAI X1。

一方でOCulinkは引き続き採用されているので、以下のような外部GPUをしっかりと接続できるのは嬉しいポイント。Type-C(USB4)端子も2口と据え置きであり「これだけは最低限欲しい」をしっかり満たしてくれているのはありがたい。

インターフェースですが、本体前面には10Gbpsに対応したUSB 3.2 Gen 2 Standard-A端子が×2、15WのUSB PD(Power Delivery)出力に対応したUSB4端子、さらに3.5mmイヤホンジャック、デジタルマイク×2を搭載。

2つのデジタルマイクはノイズキャンセルにも対応しているので、オンライン会議などで別途マイクを用意する必要がないのは便利ですね。
そして背面にはLAN端子(2.5G)、DisplayPort 2.0(リフレッシュレート最大120Hz対応)、PCIe 4.0 x4で動作するOCuLink、USB PD入力100W/出力15Wに対応したUSB4端子、HDMI 2.0出力端子(リフレッシュレート最大120Hz対応)、USB 2.0 Standard-A端子が備わっています。廉価モデルのミニPCとしては必要十分な豪華な構成。

ネットワークは、2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4に対応し、有線接続だけではなく無線でも高速ネットワークが利用可能です。
ちなみに本機に同梱されるアダプターは120W出力に対応していますが、背面のUSB4に100W出力に対応したUSB PDアダプターを接続しても起動できます。USB PDの100W出力に対応したディスプレイなら、映像出力と電源供給をUSB Type-Cケーブル1本でまとめられるので配線周りをスマートにできるのがうれしいポイント。
ただし、USB PDの100Wで動作させると僅かながらパフォーマンスに影響があるようで、ACアダプターで稼働している状態に比べてシングルコア、マルチコアスコアともに約10%程度パフォーマンスが低下しました。あくまでベンチマークスコア上でのパフォーマンス差なので実用上大した差ではありませんが、USB Type-C端子経由で電源供給する場合はその点のみ注意が必要。
Minisforum AI X1を起動
初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Proが標準装備となります。

以下、Cinebench 2024のベンチマークです。マルチコアスコアが952 pts、シングルコアが105 ptsと普通に使用する分には十分な性能で、パフォーマンス重視の人にもおすすめしやすいです。


ゲーミングのベンチマーク(ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー )についても、スコアは4300で普通とでました。独立GPUと比較してしまうとAV用途ではやや物足りない数値ですが、動画編集でもフルHDであれば問題ないですし4K編集もそれなりに耐えうるので作業用途に関してはAI X1で心許なく感じることはほとんどないといえるでしょう。
また、AI X1は従来のPCと違ってNPUが搭載されているのも大きなトピック。NPUはAI処理に特化したCPUで、これまでは高機能なGPUが必要だった自然言語処理や画像識別などをGPUを介さず、それこそ本機のようなミニPCでも省電力で実現できるというもの。
とはいえRyzen 7 260に内蔵されるNPUは、Microsoftが提唱するCopilot+ PCのパフォーマンス要件を満たしていないわけですが、決して「AI X1のNPUは無駄」ということにはなりません。あくまでCopilot+ PCの要件を満たしていないというだけであり、NPUを利用した各種ソフトウェアでしっかり恩恵は受けられます。

ただし、現時点ではまだまだNPUを搭載したPCの普及は発展途上なので、クラウド上のLLMを使ったプロダクトやサービスがほとんどで、手元の端末のNPUを活用できるアプリケーションはWindows Studio EffectsやMicrosoftのCopilot程度というのもまた事実。
加えてCopilotの場合、Microsoft 365 Personalの契約が必要なので、気軽に利用できるものでもありません。もしくは、Ryzen AI Softwareを使って自身でコードを書くしかないというのが現状。(今後NPUがさらに発展していきAI関連のアプリが増えれば良いのですが)
上位モデルのMinisforum AI X1 Proからリッチな仕様をオミットしつつも必要な機能、これだけは最低限欲しいという性能はしっかりと残しているMinisforum AI X1。

価格については、ベアボーンで8万円台前半からとやや高価にはなりますが、Minisforum製品はAmazonなどで頻繁にセール対象になるので、安価になったタイミングで狙うのもありかもしれません。
Ryzen 7 8845HS搭載のミニPCということならよりコスパの良い選択肢はほかにもありますが、OCulinkにUSB4が2基と他社製と比べてリッチな仕様であること、Minisforum製品の出来のシッカリ具合を鑑みればこれぐらいが妥当なのかなとは思いますね。OCuLinkを使った時に、M.2スロットが1つになってしまうのは残念ポイントですが、最新のモバイル用Ryzenを使ったミニPCを探している人にぜひおすすめしたい一台です。