デュアル真空管搭載の高級ポータブルCDプレーヤー「Shanling EC Zero T」レビュー

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オーディオーメーカー「Shanling」より、世界初の真空管を搭載したポータブルCDプレーヤー「EC Zero T」が登場しました。

デュアル真空管×R2R DACという異色のポータブルCDプレーヤー。そのほかBluetoothの送信に対応していたり、USB-DACとして使えたり、CDリッピング機能搭載と汎用性の高さも魅力の一台です。

今回はShanlingの代理店のMUSINさんからレビュー用に先行でサンプルを送っていただいたので、実際に2週間ほど使用してみた感想をレポートしていきます。

Shanling EC Zero T

こちらがEC Zero T本体外観。既存のプレイヤーと比べるとやや大きめではありますが、ギリギリ持ち運びができるCDプレーヤーといったサイズ感。重量も約670gと旧型から1/2の重さになっています。

別売品になりますが専用ケースもあるので、持ち出し時はこちらのケースに収納して安全に携帯することもできます。

なんといっても、いままで見慣れていたいわゆるディスクマンのような製品とはまるっきり異なる高級感あふれる筐体ですよ。アルミニウムCNC加工の一体成形を採用し、まるで据え置きのCDプレーヤーをそのままコンパクト化したようなミニチュア感がたまりません…。

手前のフロントパネルには、ボリュームスライダーと一般的な3.5mmイヤホンジャック、そして4.4mmバランス端子をそなえます。

天面にはミニディスプレイを搭載。ここからトラックの確認や各種設定が行える仕様です。

ディスプレイ右側は、レイセオンのサブミニチュア管「JAN6418」がスケルトンで露出する形。BEモードをONにすることでオレンジ色にほんのり点灯します。

さらにその右側には操作ボタン。上段に停止・再生、下段にファンクションキーと戻る・進むのボタンが並びます。ファンクションキーは短押しすることで、通常のCDプレーヤーモードとUSB-DACモードの切り替えができる仕様です。また長押しの場合は、リピート再生やゲイン変更、左右バランス調整などの各種設定を呼び出せます。

背面には3.5mm / 4.4mm LINE OUT、DIGITAL OUT、そしてUSB0-DAC用のUSB-C端子と電源入力用のUSB-C端子、さらに右端には電源駆動とバッテリー駆動の切り替えスイッチをそなえます。

CDディスクトレイは、従来のスライド式ではなく上部に開くタイプを採用。モニター下など上方向に余裕がないスペースでの設置には不向きですが、一番不具合とは無縁のアナログなパカパカ式が結局いいかなと思いますね。ちなみに、8cmタイプCDにも対応しているとのことです。

EC Zero Tを実際に使ってみる

EC Zero Tの最大の良さは、やはり「CDをCDとして、高音質で聴ける」。これに尽きます。しかも真空管&R2R DAC×4.4mmバランス接続というこの上なく至高の環境で。あと個人的に、曲と曲の間の無音部をなくす「ギャップレス再生」に対応しているのはかなり嬉しいポイント。

自宅に眠っているCDをセットするだけで、簡単に高音質再生ができてしまいます。トップカバーが透明なので、内部のCDが回転している様子を眺められるのもなんだかエモいですよね。

また、ファンクションボタンを一度押せば「CDモード↔︎USB-DACモード」の切り替えができるので、最新のストリーミング配信の楽曲もこれひとつでカバーできちゃいます。物理的なCDを用いずとも楽しめるので、USB-DACモードありきならデスクに据え置きするのも全然ありだと思います。ただ、CDとUSB-DACモード(Spotify再生)を比べると圧倒的にCD再生の方が音の解像感が高いので、やはりベースは「CDプレイヤー」としての動作が基本になるかと思います。

トランジスタを使った「ABモード」、デュアル真空管を使った「TUBEモード」の異なる2つのモードを選べるのもEC Zero Tの大きな特徴。

まずABモードですが、中低域をメインとしたややウォーム系のサウンドが特徴的で、重低音の迫力がしっかり感じられます。従来のDACやDAPのように力強い解像度重視のサウンドといった印象。一方で真空管のTUBEモードをオンにすると、全体的に輪郭がまろやかになり「いかにもアナログチックなサウンド」に変貌します。個人的には断然TUBEモードが好み(というか基本は真空管を活かしたい)で、特にライブ音源のボーカルやアコースティック系の楽曲を楽しむにはベストだと感じました。

また、「OS(オーバーサンプリング) / NOS(ノンオーバーサンプリング)」の切り替えにも対応するEC Zero T。

OSは音の解像感が向上し、NOSはより輪郭がソフトなアナログライクな音になります。本機の特徴を最大限引き出せるのはやはり「TUBEモード+NOS」のアナログ全振りサウンドだと思いますが、真空管の音を楽しみつつより解像感も求めたいという楽曲では「TUBEモード+OS」と使い分けるのがいいかなと思います。

あとはやはりギャップレス再生に対応したことは重大トピック。非対応だった従来モデルは曲が進む度にトラック間で「ブツっ」と途切れてしまうので、ライブアルバムなんかだとこれが致命的だったんですよね。これが解消されただけでも旧型から乗り換えるこじつけとしてもう十分すぎます。それぐらい嬉しいアップデート。

ただ、他の方のレビュー曰く一部CDではブツっと途切れ音が入るケースが稀にあるとのこと。僕の手持ちのCDではそういったことはなかったのでライブアルバム含めノーストレスで楽しめましたが、実際のところ一部例外もあるみたいですね。

文字通り「唯一無二」の嗜好性

製品コンセプトの通り、アナログ的な温かみやリアリティが、絶妙に表現されたShanling EC Zero T。真空管+CDプレイヤーというなかなかにマニアックな製品にはなりますが、需要さえマッチすればかなり良質なプレーヤーですよ。

価格は8万円台と、財布からポータブルCDプレーヤーに出せる価格としては高級品には違いないですが、「シーンを選ばず手持ちのCDを真空管の高音質で楽しみたい」という方にはこれ以上ない選択肢だと思います。デザイン性含め、唯一無二の個性で「欲しくなるガジェット」であることには違いないです。

実用上はDAPに劣るとはいえ、CDが回っている様子を見るのはなにせエモいですし、停止中はCDのジャケットアートを楽しめるのも楽しいです。最近はハイエンドなポータブルCDプレーヤーがトレンドになりつつありますが、こうした「高級化」がShanling EC Zero Tのような嗜好性の高い機材を生み出しているともいえるんじゃないでしょうか。

製品名Shanling EC Zero T
サイズ158×150×28mm
重量約669g
対応サンプリングレート(USB DAC)最大768kHz/32bit、DSD512
ゲイン設定High / Low
デジタルフィルターOS / NOS 切替対応
Bluetooth送信コーデックaptX Adaptive、aptX、SBC
バッテリー約7.5時間再生(4.4mm接続時)
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