紙の本を自分でスキャンして電子化する、いわゆる「本の自炊」がブームになりつつある昨今。
裁断してページをバラす方法が主流だった自炊も、家庭用スキャナーの進化により「裁断要らず・高画質・高速」で電子化できる時代になりました。今回紹介する「CZUR ET24 Pro」もそんな三拍子が揃った高性能なブックスキャナー。
2019年にAura、2020年にShine、そして2022年にLens Proと進化を遂げてきたCZURのスキャナーですが、ET24 Proは同社10周年記念フラッグシップモデルということで、従来機に比べて使用感など大幅にアップデートされています。
というわけで、今回はそんなCZUR ET24 Proがどんな感じで使うことができるのか、実際に使ってみてわかった良い点、購入前の注意点などを紹介します。原本を残したまま正確に電子化したい、最新の自炊事情が気になる!といった方はぜひ参考にしてください。
CZUR『ET24 Pro』
2013年創業のスキャン技術専門のメーカー「CZUR」が販売する非破壊型ブックスキャナー。AI画像認識による補正技術によって、裁断無しで湾曲する見開きを正確にスキャンできるのが大きな特徴です。
数ある同社スキャナー製品の中でも最上位モデルの位置付けであるET24 Pro。2,400万画素・320dpiとCZUR最高クラスのカメラ性能に加え、従来機では叶わなかった実用書などの厚みのある本(A4は50mm、A3は35mmまで)も裁断無しでスキャンが可能に。
また、HDMI出力(フルHD・60P)にも対応するので、オーバーヘッド動画カメラとして「プレゼン時に手元の資料を見せる」みたいな使い方もよさそうですね。というわけで、CZUR10周年記念フラッグシップモデル「ET24 Pro」の特徴や使用感を見てみましょう。
同梱物
まずは付属品。
箱の中身
- ET24 Pro本体
- サイドライト
- フットペダル
- ハンドボタン
- 作業マット
- 電源アダプタ
- 指サック
- USBケーブル
- 変換プラグ
- インストールCDとスタートガイド
まず冊子類の入ったスリーブの中に、マニュアルのほか、ソフトウェア用のガイドとインストールCDが入っていました(ソフトウェアは公式サイトからもインストールが可能)。
スキャン操作用のハンドボタン、フットペダルも付属。どちらか好きな方で操作できる形となっています。
スキャン時にページの端を押さえるための指サック。画像処理時には自動で画像内から取り除いてくれるCZURお馴染みの仕様です。
ET24 Proの本体外観
いわゆる一般的なオーバーヘッド形状のスキャナー本体。据え置きで使う仕様なので、 Lens ProやAuraのように「未使用時は畳んで収納する」ってことはできないのは注意点。
上部にはインジケーター類が集約されているほか、映像を確認できる小型のプレビュー画面も搭載。外部出力無しにセルフチェックできるのが非常に便利です。良き。
台座右側には各種操作ボタン。ライトの輝度調整のほか、HDMIモード時のズームなどここから操作できます。
台座背面には、左からHDMI出力端子、リセットボタン、ハンドボタン・フットペダル用のUSB端子、PC接続用のUSB端子、電源入力、電源スイッチが配置されています。
ET24 Proには、照射時に反射を抑えるための補助ライト(サイドライト)が別途付属します。
アームの背面に装着用の溝があるので、ここにサイドライトを装着したら本体のセッティングが完了。サイドライトは背面の電源ボタンでオン・オフができます。
アシストカバー(オプション)
厚い本をスキャンする際に、表紙の映り込みを防ぐためのアシストカバー(先行販売価格3,900円)。
本の表紙部分をアシストカバーに挟み込むことで、カバー中央から中身のページ部分だけを出す(ティッシュ箱の要領)ことができます。参考書など厚みのある本のスキャン時に、表紙の写り込みが気になる場合はこのカバーがあると非常にスムーズ。
スタジオボックス(オプション)
スキャンの際に反射・影の映り込みを防ぐスタジオボックスもオプション品(先行販売価格8,450円)として用意されています。
内側は反射板になっているので、作業マットをボックス内の中央に置くことで均一に光を当てることができます。
よりスキャン後の質を求める方におすすめですが、60×60×60cmの立方体なので如何せん展開するのに結構なスペースが必要。一般的な撮影ボックスに比べて組み立て・解体が煩雑なこともあり、常時据え置きできる場所が確保できる前提では有効だなと感じました。
ET24 Proの使用感
ET24 Proを書斎のMacBook Proに接続し、実際に20冊ほど書籍を取り込んでみました。使ってみて期待以上だったこと、期待を上回らなかったことなど率直に感想をまとめていきたいと思います。
高速・高精度・高画質スキャン
実際にスキャンしてみてまず感じたのが、やはり認識精度が従来機に比べて段違いに向上していること。裁断していない書籍のページは当然湾曲しているわけですが、高性能レーザーでページ面を立体情報として読み取るので、ゆがみのないフラットな状態で補正してくれます。
取り込んだスキャンデータの色味補正、コントラストはソフト上で一括調整が可能。
また「標準化」という機能では、余白をバックグラウンドカラーで埋めてページのサイズを均一に調整、なんてことも柔軟にできます。こいつはすごい。
なお、スキャン画像の解像度は最高2,400万画素、320dpiで処理され、JPEGのほか、Exel、Word、PDF形式でも出力できます。
また、本のページをめくるたびに自動で撮影してくれる「手めくりで自動スキャン」も健在。わざわざ手動でスキャンボタンを押す必要がなく、パラパラとページをめくり続けるだけで一冊スキャンが完了するのはやはり画期的。ただ、当然手動に比べて精度が落ちるので、公式記載の「見開き2ページを1〜2秒」でスキャンが進行するかといえば、さすがにそれはちょっと非現実的だと感じました。仮に見開き2ページを2秒でスキャンしていったとして、後の修正込みでトータル最低20分(200ページ程度の書籍の場合)は見ておく必要があるかなという印象。
熟練度次第で多少なり高速化できるかもしれませんが、数日使った感想としては撮影操作はフットペダルに充てて、両手フリーの状態で進行するのが結局一番スムーズかつ正確だと感じました。
撮影操作は「足」が最適?
アプリ内でのクリック操作のほか、ハンドボタン・フットペダルといった外部コントローラーでスキャン操作できるのもCZUR製品の魅力。
これによりページめくりが必要な撮影対象であっても、左右の手で湾曲を抑えながらページをめくりつつ、スキャン操作も並行して進めるってことができます。
前述のとおりフットペダルを用いた「足操作」がかなり効率的。同じ単純操作が連続する書籍の自炊において、一般的なカメラを使ったスキャンとCZURのような専用デバイスの決定的な違いはこういう操作面の効率性、選択肢の多さにあるといっても過言ではありません。
実用性の高いOCR(文字起こし)。ただし・・
ET24 Proで取り込んだデータは、PDFや画像としてエクスポートできるほか、OCR(デジタルテキストへの自動変換)機能で文書のテキスト化にも利用できます。
いわゆる「文字起こし機能」ですが、このOCR、それなりに重たい認識処理になるため、出力にかかる時間と負荷はほぼ動画レベル。M1チップ・16GBのRAMを搭載したMacBook Proで検証した結果、200ページの書籍をWordファイルとしてエクスポートするのに12分ほど掛かりました。おそらく一般的な家庭用PCの場合はもっとかかるはず。
一方でOCRの日本語の検出精度自体はかなり実用的で、文字起こしツールとしての有用性は非常に高いです。OCRで出力したデータは文字検索できるので、参考書などの電子化には非常に重宝します。
デジタル化の新時代、裁断不要のスキャナーET24 Pro
単にスキャンするだけならスマホでも専用のアプリがあるので「わざわざブックスキャナーって必要なのかな?」なんて思っていた時期が筆者にもありました。しかし、書籍を裁断せずに、ページを次々とめくりながらシームレスに高画質スキャンができるET24 Proの使用感はやはり別格。
PDF化・OCRで文書内を検索可能にしてしまうなど、情報の電子化にも一役買ってくれるCZUR ET24 Pro。販売予定価格は94,500円となっていますが、一般販売に先駆けてMakuakeにて約6万円で応援購入が可能(10月4日18時まで)となっています。紙媒体の原本を残しつつ、効率的に電子化したいといった方はぜひ導入検討してみてはいかがでしょうか。