液晶タブレットってあるじゃないですか。パソコンに繋げてディスプレイに直に書き込むあれです。
そうしたデバイスをメインで手がけている「XP Pen」というメーカーがあるのですが、そこからなんとAndroidタブレットが登場しました。
イラストデバイス的な想定というよりは、デジタルノート的な発想で、ちょっと特殊で面白いタブレットになっています。実際に1週間ほどじっくり触ってみたので、使用感をレポートしていきます。
XPPen Magic Note Padの外観
ディスプレイは10.95インチ。切りの良いところで11インチです。筐体の長編の片側が広く凹みがあるデザインになっており、この部分に付属のスタイラスペンが磁石でペタッとくっつきます。

筐体の長編の片側が広いデザインのおかげで、例えば立ち作業で使う場合、ペンで記入する時はどうしても本体を片手で持つことになるんですが、片手でホールドしやすいのが取り回しの面でいい感じです。
重量は500gを切っていて厚さも7mmとスリムボディ。背面はホワイトでサラッとした肌触りです。で、ご覧のとおりアレがないです。そう、このモデルは背面カメラが省かれています。(インカメラは搭載)

リアカメラがないことで「平置きしてもガタつかない」という、ノートとして使う上での大きな利便性を得ています。そもそもタブレットのカメラなんてほとんど使わないですからね(QRコードの読み取りとかはちょっと苦労しそう)。
上部にはボリュームボタン、左側面には上から電源ボタン、表示モードを切り替えられるX-Paperキー(後述)が備わってます。

全体的にはスマートでスタイリッシュな印象ですね。搭載しているSoCはHelio G99と今ではエントリークラスであるものの、筐体の質感はハイエンドモデルと遜色ないくらい上質です。
ペンは電池不要のタイプで、実測10.3gと非常に軽量。サイドボタンを1つそなえ、この部分に「消しゴム」など割り当てることができます。

カバーも予め付属し、ペンも完全に覆う独特の形状です。これならば、ペンを落としてしまうこともありません。いわゆるiPadの純正カバースマートフォリオライクに、マグネットで吸着して保護できるタイプです。なお、スタンドにはなりません。このあたりも、製品のコンセプトを反映しています。

ちょっとした気になる点を言うとすると、ケース付きだと結構重いんですよね。測ってみると、ケース込みの重量は743gでした。そこそこある。仕方ないんですけどね。約11インチだし。
XPPen Magic Note Padを使ってみる
持ち手兼ペン置きは理にかなっている
実際に使ってみてまず感じたのが、持ち手があるのはなにかと使いやすいなってことです。片手で長時間使うのは結構きついなとは思うんですが、しっかり掴める場所があって、片手で持って、もう片手でペンを使うなり操作するなりの余力ができ、構造上理にかなってるなと思います。

一方で、ペンの使用頻度がそこまで多くない場合は、ちょっとペンが邪魔だなって思ってしまうかもしれません。どうしても持ち手部分を握りたくなるものの、そこにはペンをくっつけておきたいので、うーんみたいな。磁力自体はしっかりしてるので、簡単に外れてしまうようなことはないんですけどね。
「ペンも使えたら良いな」くらいの人はいさぎよく普通のタブレットを買うのが吉でしょう。Magic Note Padにおいては、「基本操作からブラウジングまでペンで行う」くらいの勢いがあった方がいいかもしれません。普通にできちゃうので。
「至高の書き味」と「即座なレスポンス」
そして肝心の書き心地。タブレットにタッチペンで書き込んでいるのではなく、まさにペンタブの描き心地です。表面の材質は非常になめらかで、ペンを走らせるとわずかな沈み込みを感じ、書き味はまさに「紙+ボールペン」。
これまでにいくつかのメーカーの電子ペーパーを試してきましたが、「書き味」でMagic Note Padの右に出る者はないと断言できます。とことん「書くためのツール」に振り切った本機なので、タブレットやペンタブのような不快な滑りはまったく感じません。力の入れ具合で抵抗感が変わる感触など、どこまでも紙に近い筆記体験といえます。

iPadなどのペーパーライクフィルムを使ったことがある人ならわかるかと思いますが、書き味自体は限りなくそれに近いです。筆圧検知が可能なMagic Note Padは、沈み込みで生じる抵抗感がより自然で、ペーパーライクフィルム以上の“手書き感”が味わえます。
筆記時のレスポンスも良好で、ペン入力での遅延はほとんど感じません。1週間使い込んでみて遅延が気になることは皆無でした。
何より圧倒的に優れているポイント、ペンが充電やBluetooth接続不要で使えるのがね、本当に良いですね。あとAndroidなのでデータのやり取りも楽ちん。他にもペンのボタンを押してスクショ&書き込みを即時行えるシステムが採用されていたりと、いわゆるキワモノではなくデジタルノートとしての本気度をひしひしと感じますね。
唯一気になる点を言うと、専用カバーにはスタンド機能がないので、液タブのように角度を付けれるスタンドになればもっと使い勝手良くて最高だったなって思います。スタイラスペン保護部分によって若干の角度は付くのですが。
Androidタブレットとしての使用感

XPPen Magic Note PadのチップセットはMT8781。MediaTekの全然知らないチップなのでAnTuTuベンチマークを測定してみると、総合スコアが約35万、CPUが12万、GPU6万でした。やはり数値的にもエントリークラスの性能。ペンタブ的な機能に特化させたデバイス、総合的に判断するとこれでも価格は抑えれているような気はしますが、やや心許ない気はしますね。
とはいえゲームなど遊ぶのにも十分なスペックで、リフレッシュレートも90Hz対応なので設定すればヌルヌル、快適です。「マルチタスクでガツガツ動かそうとするとたまにカクつくときがある」ような、くらいの感じです。
OSは若干タブレット操作に調整されたものになっていて、デフォルトのホームランチャーもちょっと独自っぽかったり、設定メニューも並びが違ったりと変わっています。といっても全体的には通常のAndroidと同じように使えます。
そのほか独自機能、ショートカットも搭載しています。たまにAndroidスマホでも採用されているフローティングボタンがデフォルトで設定されていて、即時ノートを立ち上げたりスクショ撮ったりできるのが非常に便利。
それから、XPPen Magic Note Padの目玉機能の1つが「X-Paper機能」。通常表示の「ネイチャーカラーモード」、色調を低減させた目に優しい「ライトカラーモード」、完全にモノトーンの「インクペーパーモード」の3つのモードをそなえます。これらの切り替えは、設定からも可能ですが、一番シンプルなのは、タブレット上側面のボタンからの変更です。
普通に使う分には、デフォルトの「ネイチャーカラーモード」で十分ですが、読書時など、落ち着いて見たいときは「ライトカラーモード」がおすすめ。ただ、機能としては面白いものの、なかなか使いどころが難しい感はあります。

「インクペーパーモード」は、ご覧のように、モノクロというよりはセピア表示。普通のスマホの「ナイトモード」とおおむね同様です。

インクペーパーとはうたいますが、バックライトで照らしていることには変わりないので、KindleやBOOXなどの電子ペーパーとは根本的に異なります。とはいえ、これらのモードを物理的なボタンによってワンタッチで切り替えられるというのは、やはりこのデバイスの強烈な個性ではありますね。
極上の手書きノート体験ができるドロタブ

XPPen Magic Note Padは、ペン入力に注力したAndroidタブレットです。それでいて「ノート機能」に焦点を当てた、従来に無いかなり個性的な製品となっています。専用のノートアプリを備えるほか、一般的なAndroidと異なる点として、色調を抑えた表示モードをボタンによるワンタッチで切り替え、アンチグレアディスプレイ、本体にペンを収納、リアカメラのカット、といったことがあります。
それこそイラスト作成の観点ではフラッグシップ級の実力があります。ペン入力性能は「16Kの筆圧検知」という通常のタブレットの3〜4倍に相当する正確性であるほか、視差の少なさや精密さは、実際のペン入力の快適性に直結する部分も最新のペン入力デバイスの名に恥じない非常に優れたものです。
XPPen Magic Note Padは、単に高品質なペン入力に対応したタブレットというだけでなく、あえて通常の構成を変えることで新たな使い方を提案してくれる、使うだけで楽しいAndroidタブレットです。ノート機能やイラスト作成目的などでペン機能を追求している人はもちろん、新しい体験を求める人にぜひおすすめしたいです。