すっかりリモートワークが当たり前になった今、自宅の作業環境をオフィス並みに整えているという人は少なくないはず。かくいう僕も、ここ数年で自宅の作業環境を少しずつアップグレードしていき、腰を据えてじっくり作業に打ち込めるホームオフィス環境を追求してきました。
しかし、ことワークチェア選びに関してはなかなか終着点が見えず、腰が辛くなる日中以降は相変わらずスタンディングとステッパーでやり過ごす毎日。
そんな中、“個々の身体に合わせて最適化”するというSteelcaseの新作チェア「Karman」を試供いただき、1ヶ月ほど作業デスクで使用させてもらいました。
先に結論を言ってしまうと、はっきり言って、かなり座り心地がいい。背中、腰、お尻、チェアに面するすべての部位のフィット感が素晴らしく、日々のデスクワークを夢中にさせてくれる、そんな一脚。というわけで、今回はそんなSteelcase Karmanの座り心地や他のチェアに比べて優れているポイントなどじっくりレポートしていきます。
Steelcase Karmanの特徴と外観
6月21日に、世界市場No.1を誇るアメリカのオフィス家具メーカーSteelcaseから発売された、同社初のメッシュチェア「Karman(カーマン)」。詳細なスペックは以下となります。
- 素材:メッシュ(特許取得済みShrinx)
- サイズ:高さ997-1124mm、幅569-880mm、奥行534-601mm、座面高407-534mm
- 重量:13kg
- アームレスト:4Dアーム
- ヘッドレスト:なし
- ランバーサポート:あり
- リクライニング:あり
- 座面奥行調節:なし
- 組み立て:不要
- 定価:184,980円〜
この椅子の最大の特徴は、“柔軟性”にあります。「Intermix」という特許取得技術のメッシュ素材を採用し、人間工学に基づいた織物製法により、背もたれと座面にかかる負荷を均等に分散。深く腰掛けると体の形状に合わせてたわむようにもなっており、個々の身体のラインに合わせて最適化されるのだそう。
背中や大腿部への圧迫感といったメッシュチェア特有の弱点を解消し、クッションチェアのような柔らかい座り心地と、通気性を両立しているのもこのチェアの大きな特徴。なおカラー組み合わせは今回使用するブラック含め13種類と豊富に用意されており、購入の際に選択できます。
こちらが届いた状態。箱のサイズが大きいので玄関サイズは注意が必要ですが、配送料無料(離島や沖縄県を除く)で届くのはありがたいポイント。
梱包サイズが大きいのには理由があります。Steelcase Karmanの特徴の一つ、それが組み立て済みの完成品で自宅に届くということ。
段ボールを開けると、すぐに座れる状態のチェアが登場。ただでさえ巨大な梱包材の後片付けが大変な中「組み立て不要」はシンプルにラクですし、開けたテンションでそのまますぐに使えるのは体験としても最高です。
というわけでメインの作業デスクに導入してから1ヶ月ほど経過したので、実際に使ってみて期待以上だったこと、期待を上回らなかったことなど率直に感想をまとめていきたいと思います。
一ヶ月ほど作業椅子として使ってみて
「個々の身体に最適化」する極上の座り心地
「長時間 同じ体勢で座る」ことを想定し、人間工学に基づいて設計されたSteelcase Karman。実際に座ってみたところ、まるで体全体がつつみ込まれるような座り心地に驚きました。
一見すると特に何の変哲もない背もたれですが、しなやかに屈曲する流線型フレーム、身体の位置を左右にずらしても背骨の位置にフィットしてくれる「ライブバック」のおかげで、深く腰を落とすだけで背筋が自然なカタチで常に維持されるんですよね。
同社のリープチェア V2をはじめオカムラ シルフィー、本製品同様メッシュタイプのエルゴヒューマンプロなど、これまでに座ってきた現行定番のOAチェアともまた違う、全く新しい座体験で正直馴染むまでに3、4日要しました。が、時間の経過につれ背中、腰への負担が明らかに軽くなり、1ヶ月経った今では「ようやく自分の身体に合ったふつうの座位姿勢を手に入れられた・・」と歓喜しています。笑
作業やゲームに没頭して前傾ぎみになっているとき、リラックスしながら動画を見ているとき、リクライニングで深く腰を落とすとき…長時間イスに座ったままでもずっと同じ体制をしているわけではないですが、そういったさまざまなシーンで常に身体に最適化されるKarmanはまさに“身体と一体化”という表現がしっくりくるワークチェアです。
座面はメッシュ×クッションの二重構造
このチェアのもう一つの特徴が、座面がメッシュとクッションの二層機構であること。
特許取得の「クッション内蔵型ハイブリッドシート」を採用するKarman。実際に座ってみるとわかりますが、メッシュチェアでありながら特有の「硬さ」「跳ね返り」をほとんど感じないんですよね。肌触りはメッシュ生地なんだけど、深く腰を落とした感覚はクッションみたいな、これまた他のチェアでは味わったことのない感覚。
とくに筆者のようにイスに座ったまま長時間過ごすことが前提の人なら、ふかふかのクッションと換気性を損なわないメッシュの「いいとこ取り」ができるKarmanは最良の選択肢になるかもしれません。
前傾姿勢をラクにする4Dアーム
Karmanのアームは、上下、左右、前後の全方向に可動する4Dアームレストを採用。
完全なハの字にもできるので、快適な姿勢を作る上で相当細かい位置調整ができます。↓のようにデスクピッタリの高さで揃えることで、キーボードを打つときの腕の荷重が分散でき、背中や腰回りの負担がグッと減りました。
作業、ゲーム(特にFPS)に集中してるとつい前傾姿勢になってしまう筆者ですが、そんなときはアームを天板よりほんの少し高い位置に上げて前に出す、みたいにするとかなり快適な姿勢が作れるのもまた目から鱗でした。さまざまな用途で使う際に、アームが自在に調整できるというのはチェア選びで結構大きなポイントだな・・と実感。
省スペースでも置けるミニマルさも魅力
座り心地の良さはこれぐらいにしておき、チェアの外観にも目を向けてみます。宇宙空間と大気圏の境界線にある「カーマンライン」からくる名前の由来のとおり、近未来感のあるデザインが特徴のKarman。
フレームパーツが曲線のみで形成されていたり、座面と背もたれの間に大きな空間があったりとオフィスチェアとしてはこれまであまり見たことがない形状だなという印象。高級チェア特有の重い印象を与えないスッキリとしたデザインが個人的に気に入っています。
無駄がない外観からも見て取れるとおり、パーツの数を最小限に減らすことでコンパクトかつ軽量(13kg)なボディを実現しているのもKarmanの特徴。自宅の限られたスペースでも比較的導入の敷居が低いですし、実際に書斎にしばらく置いてみてやはり見た目の圧迫感が最小限なのはこのチェアの良さだなと感じます。
ネックとなるのは価格
座り心地、デザイン、機動性、どの部分にスポットを当ててみても弱点が見当たらず満足度の高いSteelcase Karmanですが、あえて欠点をあげるとしたら、価格。
Karmanのワークチェアは2モデル存在し、ベーシックモデルが18万4980円、プレミアムモデルに至っては22万9980円と高級OAチェアの中でも高額な部類になります。
とはいえ、こうして実際に試してみると座り心地や機能面は素晴らしいですし、上記のようなこのイスでしか味わえない体験価値を考えると20万円(配送料込み)という価格も決してべらぼうに高いわけではないように思えてきます。それこそ、この投資で少しでも身体への負担が軽減されるのであればむしろ20万円は安い。という考え方もできなくはないですよね。
チェアって毎日使う仕事道具なので、安価モデルを数年おきに買い換える、よりは一回きり妥協のないものを選んで5年、10年と永く使っていくのが理想的だなと個人的には思います。ちなみに僕はオカムラのシルフィーをメインチェアとして長らく使ってきましたが、しばらくサブデスクと両刀使いしていくので、後日比較をかねてKarmanの長期レビューもお届けできればと思います。