MacBookとの連携に優れたクリエイター向けモニターといえば、BenQの「PDシリーズ」。
ロピログではこれまでもいくつかのモデルをレビューしていますが、なんと32インチモデル「PD3220U」から5年ぶりの後継機が登場。それが「PD3225U」です。
前モデルから、輝度、コントラスト比、色再現性いずれも大幅に向上したほか、4辺フレームレスデザインへの刷新でいっそう洗練されたPDシリーズ最新モニター。今回はベンキュージャパンより1ヶ月間使用機会をいただいたので、使用感や機能面などレビューしていきます。
BenQ PD3225U、どんなモニター?
BenQ PD3225Uの主な特徴
- 31.5インチ、4K UHD(3840 × 2160)
- IPSパネル搭載で178°の視野角
- 色再現が正確なAQCOLORシリーズ
- CalMAN、PANTONEカラー認証取得
- HDR10/VESA DisplayHDR 400対応
- ケーブル1本接続(PCへ85W給電)
- Thunderbolt 3 対応
- OSDコントローラー(リモコン)付き
- サイズ:714.8×478.4~628.4×273.3mm、重量:8.2kg
- 定価:163,637円(執筆時Amazon価格)
先述のとおり、2019年発売の31.5インチモデル「PD3220U」の後継機種にあたる「PD3225U」。AQCOLOR技術でプロフェッショナル向けのカラー標準に対応し、sRGB/Rec.709は99%再現、より色域が広いP3系のカラーモードも98%(前モデルは95%)と、一般向けモニターでありながら業務用のカラーマネジメントモニターにも匹敵する色再現性を誇ります。
明るさは10段階の調節に対応したほか、標準輝度が「250cd/㎡」→「400cd/㎡」と大幅に向上。色表現と視認性にシビアなデザイン制作や写真編集といったクリエイティブ用途において、現行製品の中でもこの上なく頼りになるディスプレイとみていいでしょう。
前モデル同様、Thunderbolt 3(USB-C)ポートから85Wの電力供給も可能なので、MacBookをUSB-Cケーブル1本で充電しながら画面出力できる点も強みです。さらに、同じくThunderbolt 3対応のもう一方のポート(15W給電)にモバイルディスプレイをケーブル1本で増設することで、簡単にトリプルディスプレイ環境を構築することもできます。
同梱ケーブルとモニター外観
ケーブルは(左から)USB 3.2、HDMI 2.0、DisplayPort、Thunderbolt 4と全部揃ってるので、箱から出せばすぐに使い始められます。
さっそく付属スタンドを使ってデスクに設置してみました。31.5インチの大画面ディスプレイということで、広大な作業領域はもちろんモニター自体の存在感もなかなかのもの。
ただ、4辺ともフレームレスデザインということもあり、過去に使用したことのある32インチモデルに比べるとかなりスタイリッシュな印象ですね。ディスプレイサイズに対してベゼル幅約9mmと極薄なので、ほんと画面が宙に浮いてる感じ。
MacBook Proのベゼルと比べても大差なく、マルチモニター環境でもディスプレイ間のギャップや違和感も最小限です。
そしてPDシリーズお馴染みのシンプルを極めたスタンド台座。洗練されたアルミの質感がまたApple製品を彷彿させるんですよね。
そんなPD3225Uの全インターフェースは以下のとおりです。
背面のメインポート
- HDMI ×2、
- DisplayPort ×1
- USB-A(3.2) ×2
- USB-B ×1
- Mini USB-B ×1(コントローラー接続用)
- Thunderbolt 3(USB-C)85W
- Thunderbolt 3(USB-C)15W
上記メインポート群にくわえて、側面にはハブ感覚で使えるサブポートを搭載するPD3225U。ダウンストリーム用のUSB Type-C、USB Type-A (3.2)、オーディオジャックをそなえ、頻繁に取り外しする外付けSSDなんかもこの側面ポートから気軽に使えます。
パネル左右下部には、2.5W×2のステレオスピーカーを搭載(内蔵スピーカーの音質については後述します)。
BenQ PD3225U 使用感レビュー
これぞAQCOLOR。正確すぎる色表現
まずディスプレイ本体の性能についてですが、このモニターの最大の強みはなんといっても正確な色再現と発色の鮮やかさ。写真・動画編集、デザインなど「色」で勝負するクリエイターのために作られたプロ向けモニターなので、色の正確さに関してはもうガチです。
モニターは工場で大量生産される工業品なので、値段の安い高いに関わらず少なからず品質にバラツキが生じるもの。しかし、色味の個体差を許さないプロ向けモニターであるPD3225Uは、1個体ずつ手作業でキャリブレーション(色精度をチューニングする作業のこと)されています。
手元に届く製品はすべてプロの手作業によって色補正されたものなので、仮にオフィス等で複数台導入したとしても「いざ箱から出したらそれぞれ色にバラつきがある」みたいなことは間違っても起きないのです。
さらに、AQCOLORシリーズの最新モデルとしてsRGB/Rec.709のカバー率「99%」、デジタルシネマ規格のDCI-P3、Appleが策定したDisplay P3のカバー率「98%」を誇っていますので、色合いの精度に関してはかなり信用できます。
これより上の正確さを追求するとなると一気に「うん十万円の業務用カラーマネジメントモニター」に選択肢が絞られるので、費用対効果という意味ではPD3225Uの右に出る者はないはず。しかも32インチで解像度が4Kですから、DaVinci ResolveやLightroomのような画面を大きく使うソフトでの視認性も抜群。たいていの作業はこのモニター1台で完結します。
リモートワークに移行した直後に安いモニターを使っていた頃は「モニター上で編集した写真をスマホで見ると、別物レベルに色が違う…」みたいな現象がよく起きたものですが、PD3225Uではそういう類の心配はほんとに無縁になります。
Thunderbolt 3対応で、Macbookとの相性が最強
PD3225UはApple製品とピッタリなデザインをしていますが、ピッタリなのは見た目だけじゃありません。
というのも、Thunderbolt 3に対応しているので、USB-Cポートしか付いていないMacBookとの親和性が抜群なんですよ。Thunderbolt 3はUSB-Cの規格のひとつなのですが、爆速通信(40Gbps)、爆速給電(PD3225Uの場合は85W)、映像通信など…ケーブル1本で得られる恩恵がはかりしれないのです。
卓上の配線がスッキリするのはもちろん、PC自体の取り回しも劇的にラクになるんですよね。「自宅の作業環境」と「外用の周辺機器」を棲み分けしておけば、あとはMacBookを持ち出すときにケーブル一本を抜き差しするだけでいいんですから。
そして、MacBookとの色差を抑えてくれる専用のカラーモード「M-Bookモード」。
ガンマ・ダイナミックコントラスト・色温度を接続したMacBookの内蔵デイスプレイと同様の設定にできるというもので、上記写真のとおりM-Bookモード時は限りなくMacBookに近い色が出せます(いじったのは輝度だけ)。
「Mac推奨モデルと謳っているのにいざ繋いでみると全然色味がちがう・・」なんてこともざらにありますから、ちゃんと標準でそれ専用のモードが付いてるのは安心です。
充実のカラーモードと「DualView機能」
使用ソフトや作業内容に合わせて、柔軟にカラーモードを最適化できるのもPD3225Uの特徴。
明るさを10段階で調節できる「デザイン(アニメーション)モード」や、3D CADのアプリ使用時にカラーラインのコントラストを高める「CAD/CAMモード」、輝度を落とした状態でも明るさやコントラストを調節して明瞭に表示する「暗室モード」など…標準搭載のカラーモードの選択肢はかなり充実してます。
同一画面内に異なるカラーモードのイラストや写真を並べて表示できる「DualView(デュアルビュー)」機能も健在。たとえば、「CAD/CAMモードで製図をしながら、Display P3やsRGBモードで色味を追い込む」といった使い方も一画面上でできちゃいます。
使い勝手が出色のOSDコントローラー
PD3225Uには「ホットキーパックG2」というダイアル付きのOSDコントローラーが付属し、背面のMini USB-Bに接続して使うことができます。
明るさ調整やカラーモードの変更、入力切替えなど、モニターの設定が全部手元のOSDコントローラーで完結。これは便利です。モニター背面に手を伸ばして物理ボタンをポチポチ…みたいな手間は一切必要ナシ。
そのときの部屋の明るさに合わせて画面輝度を変えたい筆者は、ダイアルに輝度調整を割り当ててます。手前の「1,2,3」には好きなショートカットを記憶させられるので、sRGB、M-book、ブルーライト軽減をそれぞれ割り当てて用途毎に画面モードを切り替えて使っています。
本来カラーモードって頻繁に変えるものじゃないと思いますすが、手元のコントローラーからコロコロ変えられる仕様はデザインや編集作業をする人にとって頼もしい機能のひとつでしょう。
内蔵スピーカーの音質は・・
PD3225Uはスピーカーを内蔵しているため、PC側の音声を出力させることもできます。
とはいえスピーカー性能は前モデルから据え置きの2.5W × 2のステレオスピーカー。2.1chスピーカー内蔵のEWシリーズなどと比べても音はお世辞にも良いとはいえません。
MacBookの内蔵スピーカーの方がふつうに音質は上なので、MacBookの外部ディスプレイとしてPD3225Uを使う際はスピーカーの出力先だけMacに戻しておくのが賢明かなと。
そもそも色精度にコミットしたプロ向けモデルで「音も鳴る」時点で優秀には違いないですが、音質にもこだわりたい人は3.5mmオーディオジャックでスピーカーやヘッドホンを挿して音を取るのが間違いないと思います。
たしかに価格は高いけど・・
この領域のディスプレイを検討している人のほとんどがクリエイターだと思いますが、広色域と色精度が求められる場面においては右に出る者のない、そんなモニターです。
実売価格16万円前後と値段は確かに高いですが、これ以上のスペックを求めるとそこはもう数十万円の業務用モニターの世界ですからね。機能に対して現実的にまだ手が届く範囲の「PD3225U」は、プロアマかかわらずクリエイターにとって最善でないにしろ最良の選択肢になり得る一台じゃないでしょうか。
インターフェイスや機能面も不足はないですし、クリエイティブ用途において八面六臂の働きが期待できるPD3225U。「MacBook用にハイスペックなモニターを一台そなえたい」そんな方はこの機会に狙ってみるのもありかもしれません。