これまでは、Bluetoothヘッドホンには「無線接続やノイキャンは便利だけど、音質を重視するならやっぱり有線ヘッドホンでしょ」なんて思ってました。ただ、近年のBluetoothヘッドホンの進化は目を見張るものがあり、「もはやそんな区別を気にしなくていいんじゃないか」と思わせてくれるモデルがどんどん登場しています。
JBLの新作フラッグシップBluetoothヘッドホン「TOUR ONE M3」がまさにそれです。ドライバーを新素材に刷新しただけでなく、LDACやUSBオーディオにも対応し、ノイズキャンセリングやマイク性能も向上した新モデル。実際に1週間ほど使用してみたので、音質や機能面などレポートしていきます。
JBL TOUR ONE M3の外観
さっそくヘッドホン本体の外観から見ていきます。全体的に骨太で上質感のあるデザインの筐体は、歴代のTOUR ONE Mシリーズから継承されています。

素材にはメタリック塗装とセミマットなUV加工が施された筐体。ブランドロゴの装飾も控えめで、シンプルかつモダンな印象です。
内部構造とハウジング(イヤーカップ)は新たに最高築され、独立した音響チャンバーと、最小限のパーツから合理的に設計されたハウジングとなっています。

イヤーパッドには新たに高品質なプロテインレザー(人工皮革)を採用。パッド自体の肉厚も相まってモッチモチ。低反発の加減もほどよく装着感はバツグンに良いです(詳細は後述します)。

また、前作からドライバーの開口部がより広く取られていて、耳全体を覆いやすくなっています。それにより、パッシブのノイズキャンセリングが改良され、遮音性や装着感、また通気性が向上しているとのこと。
ヘッドバンドの内側にもプロテインレザーがあしらわれ、こちらもモチモチ。段階式のスライダーは静かな音でジリジリと可動し非常になめらかな感触です。

両ハウジングには、音量調整ボタン(+/-)ANC/アンビエント切り替えボタン、USB-C端子が備わっています。

なお、前作には2.5mmのイヤホンジャックがそなわっていましたが、TOUR ONE M3では非搭載となっています。代わりに、りUSB-C to 3.5mmケーブルが付属するようになり、USB経由で有線接続ができるようになったのは大きなトピックです。
アームは90度に回転・折りたたみが可能で、コンパクトに収納可能。フラッグシップモデルということもあり、堅牢なキャリングケースが付属するのも嬉しいポイント。

重量は実測で約278gと、フラッグシップのワイヤレスヘッドホンとしては軽量性にも富んでいます。

JBL TOUR ONE M3を使ってみる
快適性と密閉感を両立した装着感
というわけで、1週間ほどJBL TOUR ONE M3をじっくり堪能してみました。
装着後の第一印象はどちらも「気持ち側圧強めかな?」って感じだったんですが、作業時のながら聴きで4時間くらい装着してみたところ、これが意外と耳も頭頂部もまったく痛くならないんですよね。

肉厚のイヤーパッドもヘッドパッドも圧迫感が少ないですし、ソフトに耳を覆いつつもしっかりと密閉してくれる、そんな装着感。側圧と密閉感の加減が絶妙なので、長時間のリスニングでも耳に負担がかかりにくいというのがまずうれしいポイント。
移動中やカフェ作業時など首を傾けるようなシーンでもいっさい位置ズレすることもなく、それでいて耳あたりの優しい軽快な装着感も相まって、長時間使えるヘッドホンとして実用性はかなり向上してるように感じました。
振動板から進化した音質
ヘッドホンにとって重要な心臓部ともいえるドライバーユニットのサイズは「40mm径」。振動板の素材がPU(ポリウレタン)とLCP(液晶ポリマー)を組み合わせだった前作に対して、TOUR ONE M3では鉱物の一種であるマイカ(雲母)のドームに刷新されています。
プロ用モニターヘッドホンでも使用されるマイカの振動板によって、特に高域の伸びやかさが向上しているのだそう。実際に一聴してみて、するどさやタイトさを持ちつつも、繊細さも損なわない耳に刺さらず滑らかに抜けていくような高域に感動しました…。

そして低域は従来のJBLらしくタイトで迫力もしっかり感じられ、かつ空間表現や最後の音が消えるまでの余韻までとても丁寧に鳴らしてくれる印象。
キツさや鋭さを感じさせない抜け感たっぷりの高域、艶っぽさたっぷりにボーカルが響く中域、ベースやキックドラムがタイトにキレよく響く低域、どの帯域に目を向けても最高峰の完成度だと感じます。
従来のロックやポップス、EDMやヒップホップな土との相性の良さにくわえて、全体的に解像感がアップした今作はジャズやクラシック含めどんなジャンルにも適していると感じますね。モニターライクでクセが少なくジャンルも選ばないので、ハイエンドヘッドホンとして万人におすすめしやすいという印象を受けました。
パッシブ&マイクの刷新でANC性能も進化
マイク数が6つだった前作から、8つに増強されたアクティブノイズキャンセリング。そもそものパッシブの進化にくわえて、新リアルタイム補正機能も追加されるなど遮音性は同価格帯のヘッドホンの中でも最高品質だと感じます。
実際に数日屋外で使ってみたところ、ゴーっと低くひびく電車の走行音や、日常のロードノイズはガッツリかき消してくれますね。特に風切り音や人の話し声みたいな「高域帯のノイズ制御」はTOUR ONE M3になってかなり向上したように感じました。

ロードノイズに対しての遮音性はそうとう優秀なので、逆に公共空間では周りの状況に積極的に気をくばる必要はあるほど。反面、「通学や通勤時に決まった環境で習慣的に音楽を聴く」という人には、この上なく没入できるBluetoothヘッドホンでしょう。
あとこれはJBLで共通する良さですが、ノイキャン時のホワイトノイズの類が皆無なんですよね。無音の状態で付けていてもサーっみたいなノイズがのらないので、カフェでの作業時や屋外などでは耳栓的にもかなり重宝しています。
老舗オーディオメーカーならではの充実したアプリ機能
例によって専用アプリ「JBL Headphones」から各種設定が可能なTOUR ONE M3。
ノイズキャンセリングや外音取り込み機能の各設定、イコライザー設定(10バンド各±7dB)、空間サウンド、タッチ操作の変更、最大音量のリミッターなどアプリ内で設定できる項目は多岐にわたります。


聴力テストで個々の耳に対して最適な音響設定を自動で作ってくれる「Personi-Fi 3.0」など、老舗オーディオメーカーならではの機能も充実。そのほか、前作では非搭載だった「通話イコライザー」(相手の声質と自分の声質を調整することが可能)や、音声の集音量を大きくして、補聴器的に使う「パーソナルサウンドアンプリフィケーション」などもアプリから設定可能です。
オールジャンル型Bluetoothヘッドホンの到達点

自宅でサクッと楽しめる映像や音楽といったコンテンツが日々増えていくなかで、JBL TOUR ONE M3のような高音質のワイヤレスヘッドホンを自宅で利用しながら楽しむというシーンもこれから先いっそう広がっていきそうです。
そんななかでも、音質、装着感、機能性どこをとっても優れたワイヤレスヘッドホンTOUR ONE M3は、日常的に音質へ拘る人たちの間で市民権を得る逸品になりそうな予感。また、4万円台と他社のフラッグシップよりも手の届きやすい価格に設定されていることも込みで「Bluetoothヘッドフォンってここまで進化したんだ」と感慨深いものがありますね…。
予算4〜5万円で自宅で使える良質なBluetoothヘッドホンを探している、音質、機能性、デザインどれも妥協したくない、そんな人はぜひJBL TOUR ONE M3を検討してみてはいかがでしょうか。
製品名 | JBL TOUR ONE M3 |
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コーデック | SBC / AAC / LDAC / LC3 |
ドライバー | 40mm マイカドームドライバー |
有線接続 | DAC内蔵アクティブデジタル接続(96kHz/24bit) |
空間オーディオ | ◯(ヘッドトラッキング付き) |
マルチポイント | ◯ |
再生時間(ANCオン時) | 最大40時間 |
再生時間(ANCオフ時) | 最大70時間 |
カラーバリエーション | ブラック / モカ / ブルー(限定色) トランスミッター同梱モデルはブラック |
定価 | 49,500円 / 57,200円(トランスミッターモデル) |