Macで原稿執筆する際のメインキーボードは、PFUのHHKB Professional HYBRID Type-Sを愛用しています(かれこれ5年間くらい持ち歩いてる)。
語り始めると止まらないので今回は割愛しますが、とにかく“仕事道具”として完成されたキーボード。

そんなHHKBシリーズから27年ぶりの新型フラッグシップ機として登場したのが「HHKB Studio」。従来の静電容量無接点方式から新基軸のメカニカルスイッチに刷新されたモデルですが、今回カラーラインナップに「雪モデル」が追加されたとのこと。
HHKB愛が高じて発信するあまり今回なんとPFUさんからモニター機をお送りいただいたので、改めてこのキーボードの良さを含めてレビューしていきます。キーボードのアップデートにHHKB Studioを検討している人はぜひ参考にしてください。
“オールインワンデバイス”へと進化したHHKB
従来のキー配列を基板としたコンパクトサイズはそのままに(日本語配列72キー/英語配列63キー)、マウスキー、カーソル操作のポインティングスティック、スクロール操作など割り当てられるジェスチャーパッドを装備したHHKB Studio。
キーボード単機能ではなく、「マウスやジェスチャ操作もこれ一つで完結するよ」というオールインワンデバイスへ進化したというわけです。

キースイッチは静音メカニカルスイッチ(押下圧45gリニア)を採用し、キー軸を自分好みに交換できるホットスワップにも対応。加えて、無線・有線の両方で使える利便性はHYBRID Type-Sから継承しています。
価格は44,000円と現行の最上位モデルに相当しますが、静電容量無接点方式を採用する従来のHYBRID Type-Sに置き換わる後継機ということではなく、あくまで“ハイブリッド仕様”に新設計された別ラインの上位機種になります。
そんなHHKB Studioに、新たなカラーラインナップとして追加されたのが「雪モデル」です。
ユーザー人気の高いカラー「雪」
「HHKB Studio 雪」は、墨(ブラック)モデルと対照的なホワイトをベースとしたモデルです。ユーザーから人気の高いカラーで、HHKB Studioにも要望が多かったことから、製品化に至ったとのこと。

キートップの印字は、従来の黒ではなくクールグレーを採用。作業の妨げにならないよう配慮されています。印字はもちろん昇華印刷なので、長期間の使用でも耐摩耗性に優れています。

ボディは雪色ベースに、ホワイトシルバーという組み合わせ。フラッグシップ機ならではの重厚感と落ち着いた雰囲気が特徴です。
HHKB Studioの外観
従来のフラッグシップ機「HHKB Professional HYBRID Type-S」と比べて、ひと回り大きいサイズ感である「HHKB Studio」。

両機を並べてみると、HHKB Studioは下部のマウスキー分タテに長いことがわかります。ちなみにサイズと重さの公称値は「HHKB Professional HYBRID Type-S」が 294×120×40mm・540g、「HHKB Studio」が308×132×41mm・840g(ともに電池含まず)となっています。

ハードウェアで従来機から継承しているのは、キー配列とシリンドリカルステップスカルプチャー(キートップが弧を描くように凹んでいる)の2点。

そして、HHKB Studio固有の新機能が「ポインティングスティック・ジェスチャーパッド・マウスキー」の3つ(それぞれの詳細な使用感は後述します)。



前述のとおり、従来の静電容量無接点方式キーから、Cherry MX互換のメカニカルキーになったのも大きな変更点です。すべてのキースイッチがホットスワップで交換可能だし、キートップも自由に差し替えできます(シリンドリカルステップスカルプチャーに合うキーは現状限られますが)。この通りハードウェア側のカスタマイズ性もHHKB Studioならでは。

あと、ホットスワップになったことで「修飾キーだけ打ち心地を変える」「WASDキーだけスイッチを変える」みたいなアレンジが効くのも嬉しいところ。将来的にキースイッチが劣化しても部分的に差し替えできるのも安心ですしね。
HHKB Studioの使用感
これだけの高級キーボードはデバイス自体ある種の嗜好品ともとれるので、身も蓋もないことを言うと、打鍵感は「好み次第」だと思っています。それを前提としても、HHKBヘビーユーザーの僕は「価格に相応しい上質さがしっかりある」と感じます。

静電容量無接点方式からメカニカルキーになったとはいえ、そこはHHKB。キースイッチはKailh社のカスタム品(PFU社が独自にチューンナップ)で打鍵感はこだわり抜かれていますし、メカニカル特有のカチャカチャ感が控えめで非常に軽快にキー入力できます。「静かさ」という点でも、静音モデルの位置付けにあるHYBRID Type-Sとも遜色ない印象です。
「HHKB Professional HYBRID Type-S」と「HHKB Studio」、それぞれ実際に打鍵している様子がこちら。
HHKB Professional HYBRID Type-S
HHKB Studio
キースイッチが違う両機なので当然ですが、こうして比べると全く別物ですね。スコっと軽快に抜けるType-Sの中毒性はさることながら、Studioのコトコト、サクサクと静かに響く打鍵音もまたやみつき感があります。
僕はどれだけ気に入ったものでもそれ一つをずっと使い続けられない飽き性なのですが、原稿や編集系タスクはStudio(後述するジェスチャ操作を駆使)、ブログなど長文のテキスト入力はType-S。みたいに自然と両刀使いになってました(いや贅沢すぎる)
キー操作以外の「新機能」について
続いて、HHKB Studioのキー操作以外の新しい機能の使用感について。
ジェスチャーパッド
まず個人的に一番便利だと感じたのが、両側面と手前左右の4ヶ所にあるジェスチャーパッド。

US配列モデルには、伝統的にカーソルキー(方向キー)が付かないHHKB。そのためFnキーを使った同時押し操作が必要になるわけですが、これがそれなりに手間だったりします。その代替としてジェスチャーパッドがかなり有用であり、US配列ではとくに恩恵を感じられました。
操作自体も非常に直感的で馴染みやすく、文書のスクロールやブラウジングもジェスチャーパッド上でサクサクできます。さらに、キーマップ変更ツールからそれぞれの役割を変えたり(デフォルトでは、左前が左右キー、左横が上下キー、右前がウィンドウ切替、右横がスクロール)、キーボード単体でスクロールの感度を4段階で調整できるという充実ぶり。

シンプルな方向キーとしての役割だけでも有用なジェスチャーパッドですが、CtrlキーやFnキーなどと組み合わせてのショートカットキー機能もまた便利なところ。(キーマップのプロファイルは4種類保存可能)

例えば「Ctrl」+「下方向キー」で「デスクトップ表示」を割り当てれば、「Ctrlキーを押しながらジェスチャーパッド左側面をスライド」でデスクトップ表示が反映されるといった具合です。ソフトウェアと組み合わせたカスタマイズ込みで、自分好みにアップデートしていく過程がまた楽しいんですよね。

ちなみに、複数の指を使ってのスワイプやピンチイン・アウトなんかもジェスチャーパッド上で完結するので、トラックパッド派の人でも抵抗感少なく移行できるはず。
ポインティングスティックとマウスキー
続いて、ポインティングスティックとマウスキー。

一目見て思わずIBMのThinkPadを想起した両機能。マウス操作はもとより、熟練次第で視線を手元に一切移すことなくカーソル操作まで完結します。一回慣れてしまうと従来のポインティングには戻れない中毒性がたしかにあると感じました。
ちなみに僕が普段レタッチや執筆時に使っているポインティングデバイスはロジクールのMX Master3sですが、5日ほどみっちりLightroomやExcelを触ってようやく同等の操作感に達したかなといった所感ですね。外付けマウスはもとより、MacBook内蔵のトラックパッドからと考えても前述のジェスチャーパッド含めストレスなく移行できました。
「All-in-Oneデバイス」としてのHHKB Studioの使用感にかなり満足していますが、個人的に少し残念だったのがマウスキー自体の品質について。

打鍵感、静音性にこだわり抜かれている通常キーと比較すると、キートップの僅かなぐらつき、クリック時のカチャカチャ音はどうしても気になるところ。もちろんマウスのクリックを担うキーと考えれば必要十分なんですが、キャップの質感自体も何となくチープ(形状も凹凸がなく平面)な感じは否めません。
でもまあこれくらいしか粗が見つけられないくらい、機能面での作り込みは完成されてるってことなので、マウスキーやジェスチャーパッドなどを目当てに購入を検討するのは大いにアリだと思います。
使い始めたらもう手放せない。HHKB Studio

従来のHHKBのコンセプトを継承しつつも、「キー入力」という単機能に特化された従来モデルとは方向性がまるっきり違うってことはわかっていただけたかと思います。
キーボードとポインティングデバイスの融合、用途の変化に合わせて常に最適化していけるカスタマイズ性、PFUの専売特許である極上のキータッチ、筐体の質感含め、44,000円という価格に見合うバリューがしっかり詰まった至高のキーボードだと感じました。
熟練次第ではマウスや左手デバイスの一本化も夢じゃないオールインワンデバイスって点でも、永く使っていく仕事道具として選んで損しないキーボードだと思います。HHKBファンはもちろん、逆にこれまでHHKBに馴染みがなかった人にも素直におすすめしたい逸品です。