ゼンハイザー HDB 630レビュー|伝統「HD」シリーズ待望のワイヤレスモデル!

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AIに「ゼンハイザーのヘッドホンといえば?」と投げれば、「HD 600」と返ってくるはず。ゼンハイザーの代名詞的存在で、発売から25年以上も愛され続けています。

そんなHD 600番台に、今までなかったワイヤレスモデル「HDB 630」が登場。現行の無線モデルのMOMENTUM 4 Wirelessの性能に、有線ヘッドホンの「HD 600シリーズ」の音を乗せた最新モデルです。

HD 600シリーズの特徴である緻密でニュートラルなチューニングに、豊かなボーカルとノイズキャンセリング、密閉型デザインを組み合わせることで、外出先でもHD 600シリーズのサウンドを気軽に楽しめるようになった一台。実際に1週間ほど使用してみたので、音質や機能面などレポートしていきます。

ゼンハイザー(Sennheiser)
目次

HDB 630の外観

MOMENTUM 4 Wirelessを踏襲したようなハウジングデザインが特徴のHDB 630本体。

ハウジングは180度曲げられる仕様となっており、ヘッドホン収納時や、首にかけるときにも邪魔にならず、コンパクトに運用できます。

イヤーパッドはMOMENTUM 4 Wirelessと同様の素材で、やわらかく通気性の高い低反発ウレタン素材を採用。パッド自体の肉厚も相まってモッチモチ。低反発の加減もほどよく装着感はバツグンに良いです(詳細は後述します)。

ヘッドバンドの内側にも低反発ウレタンがあしらわれ、こちらもモチモチでしっかりクッションが効いています。ステンレススチール製のアームは無段階でスムーズに伸縮します。この曲線もまた美しい…。

右側底面には充電用のUSB-C端子、電源兼ペアリングボタン、そして充電残量を確認するためのLEDランプ。タッチ操作も全て右耳側だけで行うため、操作基盤は全て右側に備わっています。

予め専用ケースが付属するので、この中に収納して携帯することもできます。なお、ヘッドホン本体の折り畳みは不可で、そのまま収納する形式。とはいえミニマルなサイズ感とおにぎり型のケースも相まってコンパクトに持ち運ぶことができます。

音質にこだわる人の多くは、有線のヘッドホンやイヤホンを使いますよね。それはなぜかと言われれば、やはりコーデックの壁が大きい。ゼンハイザーとしても、600番台でワイヤレスを実現するためにはコーデックの壁をクリアする必要があったと語っています。そのために編み出したのが、ドングルの同梱…!

Bluetoothトランスミッター「BTD 700」が、なんと予め付属します。この「BTD 700」はUSB Type-C接続でiPhoneなどと接続が可能。例えばiPhoneのコーデックはAACが最大伝送効率ですが、BTD 700を使うことでより高音質なaptX Adaptiveでの伝送が可能になります。音質のためにドングルまで同梱する、なんというパワースタイル。

ゼンハイザー HDB 630を使ってみる

快適性と密閉感を両立した装着感

というわけで、1週間ほどゼンハイザー HDB 630をじっくり堪能してみました。

まず装着感ですが非常に良好です。ヘッドパッド、イヤーパッド共にモチモチフワフワで耳と頭を優しく柔らかく包み込んでくれます。単に「装着感が良い!」だけでは済ませたくない、「包容力」を感じる肉感のある装着感。

側圧と密閉感の加減が絶妙なので、長時間のリスニングでも耳に負担がかかりにくいというのがまずうれしいポイント。移動中やカフェ作業時など首を傾けるようなシーンでもいっさい位置ズレすることもなく、それでいてやわらかく通気性の高い装着感も相まって、長時間使えるヘッドホンとして実用性はかなり優秀だと感じました。

ノイキャンワイヤレス最高峰の音質

HDB 630の音質についてですが、さすがこの価格ということもありMOMENTUM 4 Wireelss とは明らかに1レベル上と思えるような音質の良さを感じます。音の傾向はHD 600のような繊細さがありつつも、全体的に明るめで現代的な音といった印象。

42mmのトランスデューサーをベースとして、アコースティックシステム全体を一新。例えばドライバーと耳を隔てる最後の壁となるダストカバー部分は、より高域が広がるよう改善。内部のアコースティックメッシュやバックボリューム、システム全体を覆うイヤーカップも最適化されています。

MOMENTUM 4 Wirelessは全体的にダイナミックで迫力重視な音でしたが、HDB 630はもう少し繊細でていねいでありつつ、深みや広がりのあるサウンドといったイメージですね。音場に関してもMOMENTUM 4 Wirelessよりも広めで、高域のハイハットやアコースティックギターは耳の外側で定位良く鳴りつつ、低域は立体的にフロアに広がっていくような感覚があります。

タイトで迫力もしっかり感じられ、かつ空間表現や最後の音が消えるまでの余韻までとてもていねいに鳴らしてくれる印象。キツさや鋭さを感じさせない抜け感たっぷりの高域、艶っぽさたっぷりにボーカルが響く中域、ベースやキックドラムがタイトにキレよく響く低域、どの帯域に目を向けてもノイキャンヘッドホン最高峰の完成度だと感じます。

相性としては、ロックやポップス、EDMやヒップホップなどとの相性の良さにくわえて、HD 600シリーズらしくジャズやクラシック含めどんなジャンルにも適していると感じますね。モニターライクでクセが少なくジャンルも選ばないので、ハイエンドヘッドホンとして万人におすすめしやすいという印象を受けました。

強力なノイズキャンセリングと自然な外音取り込み

HDB 630のノイズキャンセリング性能はMOMENTUM 4 Wireless同様にかなり強めですね。ウレタンのパッシブの遮音性も相まって、同価格帯のヘッドホンの中でも最高品質だと感じます。

実際に数日屋外で使ってみたところ、ゴーっと低くひびく電車の走行音や、日常のロードノイズはガッツリかき消してくれますね。風切り音や人の話し声みたいな「中高域帯のノイズ制御」も申し分なしといった印象です。

ロードノイズに対しての遮音性はそうとう優秀なので、逆に公共空間では周りの状況に積極的に気をくばる必要はあるほど。反面、「通学や通勤時に決まった環境で習慣的に音楽を聴く」という人には、この上なく没入できるBluetoothヘッドホンでしょう。

また、ノイキャン時のホワイトノイズの類が皆無であることもゼンハイザー製品の良さです。無音の状態で付けていてもサーっみたいなノイズがのらないので、カフェでの作業時や屋外などでは耳栓的にもかなり重宝しています。外音取り込み機能も自分の声がはっきり聞き取れるくらい優秀なので、装着したままの会話も円滑にできます。

充実したアプリ機能

HDB 630は、例によって専用アプリでイコライザー設定やカスタマイズを行えます。

8種類のEQプリセットの選択、イコライザー設定やタッチ操作の変更、ファームウェアアップデートなどにくわえて、周りのノイズレベルに合わせてノイズキャンセリング量を調整する「アダプティブ」のON・OFFや、外音レベルの調整ができるアダプティブノイズキャンセレーションの設定もこのアプリ内で行えます。

家でも外でも、有線クラスのゼンハイザーサウンドを

自宅でサクッと楽しめる映像や音楽といったコンテンツが日々増えていくなかで、HDB 630のような高音質のワイヤレスヘッドホンを自宅で利用しながら楽しむというシーンもこれから先いっそう広がっていきそうです。

そんななかでも、音質、装着感、機能性どこをとっても優れたワイヤレスヘッドホンHDB 630は、日常的に音質へ拘る人たちの間で市民権を得る逸品になりそうな予感。価格は87,000円(執筆時)と御世辞にも安価とはいえないにしろ、「Bluetoothヘッドホンってここまで進化したんだ」と感慨深いものがありますね…。

ワイヤレスで音質を語るなら、せめてaptX Adaptive。というわけでiPhoneユーザーのあなたも「HDB 630」で有線クラスのゼンハイザーを堪能してみてはいかがでしょうか。また、予算度外視で音質の良いワイヤレスヘッドホンを探している人、屋外でもHD 600シリーズの音を気軽に楽しみたいという人もぜひチェックしてみてください。

ゼンハイザー(Sennheiser)
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