はじめからモニターアームを使ってディスプレイを設置するなら、アームとモニター本体がセットになったモデルを選んだ方が話は早いですよね。
今回BenQから新たに発売された27インチ4KモニターPD2706UAもそのうちの一つで、最初からエルゴノミクス仕様のモニターアームが付属するというもの。
外部特許を取得しているAQCOLORシリーズの新型ということで、ディスプレイ自体の画質や色味の正確性も折り紙付き。
加えてUSB Type-Cケーブル1本での給電+映像出力に対応し、MacBook向けの外部ディスプレイを検討している人にもおすすめできる一台です。
というわけで、この記事では4K UHD エルゴモニターのBenQ PD2706UAがどんな感じで使うことができるのか、使ってみてわかったメリット・デメリットなどレビューしていきたいと思います。
BenQ PD2706UAの特徴
2023年10月13日にベンキュージャパンから発売された、モニターアーム付属の27型4Kディスプレイ「PD2706UA」。主なスペックと特徴は以下のとおりです。
製品名 | BenQ PD2706UA |
---|---|
画面サイズ | 27 インチ |
パネル | IPS |
解像度 | 3840×2160(4K) |
輝度 | 350 cd/㎡ |
HDR | HDR10, VESA DisplayHDR 400 |
コントラスト比 | 1200:1 |
視野角(°) | 178°/178° |
応答速度 | 5 ms |
リフレッシュレート(Hz) | 60Hz |
色域 | P3 95% , Rec.709 99%, sRGB 99% |
アスペクト比 | 16:9 |
表面処理 | ノングレア |
入出力端子 | HDMI 2.0 × 1、DisplayPort 1.4 × 1 USB Type-C(90W 給電)× 1、USB Type-C(Downstream)× 1 USB3.2 Gen1(Downstream)× 3、USB Type-B(Upstream)× 1 |
カラーモード | デザイン , CAD/CAM, 暗室, DCI-P3, DICOM, Display P3, ePaper, HDR, ブルーライト軽減, M-Book, Rec.709, sRGB, ユーザー |
PD2706UAの主な特徴
- エルゴノミクス仕様のモニターアームが付属
- 色再現が正確なAQCOLORシリーズ
- 4K HDR10対応(DisplayHDR 400)
- USB Type-C (90W給電) ケーブル1本で接続可能
- CalMAN、PANTONEカラー認証取得
- 定価:102,600円(税込)
前モデルから輝度が350cd/㎡にアップグレードしたほか、公称値でsRGB / Rec.709カバー率99%、Display P3/DCI-P3 95%と、色の鮮やかさや正確さに関しては“ガチ”のモニターです。
Adobe RGB対応が必須のフォトグラファーを除けば、写真や動画編集でこれ以上のモニターは必要ないといっていいでしょう。
そのほかUSB Type-Cが90W給電に対応、アイケア特化のePaperモードが追加されたりと各機能が順当に進化しているPD2706UA。というわけで、実機を使って外観や使用感、色味の性能など見てみましょう。
同梱物と外観
まずは付属品。
箱の中身
- モニター本体
- クランプ式モニターアーム
- ホットキーパック G2
- 電源ケーブル(1.8m)
- USB 3.2 Gen1ケーブル x 1 (1.8m)
- USB Type-Cケーブル(1.5m)
- HDMI 2.0ケーブル(1.8m)
- DisplayPort 1.2ケーブル(1.8m)
- インタフェースカバー
- キャリブレーションレポート
- ユーザーガイド/保証書
ケーブルはHDMI 2.0、USB 3.2、DisplayPort、USB Type-Cと全部揃ってるので、どんな環境でも箱から出せばすぐに使い始められます。
付属アームは天板にクランプするタイプで、本製品はこのモニターアームでの設置ありき。なので一般的なスタンド型の台座は付属しないので注意してください。
もちろんVESAマウント(100×100 mm)にも対応しているので、万が一付属のモニターアームで何かしら不具合があれば別のものに付け替えることもできます。
というわけで、実際に付属アームを使ってデスクに設置してみました。
ディスプレイ本体の設計は一般的なモニターと同じスタイルで、3辺フレームレスデザインを採用しています。
MacBook Proと並べても遜色のない薄さで、画面間の行き来も問題ありません。
また、パネルは非光沢タイプ(ノングレア)を採用しているので光の反射は最小限に抑えられています。
モニター底面には各種インターフェイス。
入出力端子一覧(側面ポート含む)
- HDMI 2.0 × 1
- DisplayPort 1.4 × 1
- USB Type-C(90W 給電)× 1
- USB Type-C(Downstream)× 1
- USB3.2 Gen1(Downstream)× 3
- USB Type-B (Upstream)× 1
USB Type-CポートはPD(90W出力)に対応しているので、付属のUSB Type-Cケーブル1本でMacBookなどのPCを充電しながら画面出力することができます。
モニターの右側面には、USB-AとUSB Type-Cポートが一つずつ配置。HDDやメモリを差し込めばここからデータ転送なども可能と拡張性の高い仕様になっています。
付属コントローラーの使用感が秀逸な本機ですが(詳細は後述)、ディスプレイ背面の物理ボタンからも操作が可能になっています。
パネル左右下部には、同シリーズお馴染みの2.5W×2のステレオスピーカーを搭載(内蔵スピーカーの音質については後述)。
BenQ PD2706UAのレビュー
これぞAQCOLOR。“正確すぎる”色表現
まずディスプレイ本体の性能についてですが、このモニターの最大の強みは正確な色再現と発色の鮮やかさ。これに尽きます。
そもそも同PDシリーズは写真・動画編集、デザインなど「色」で勝負するクリエイターのために作られたモニターなので、色の正確さに関してはトップクラスの品質となっています。キャリブレーションツールを使って色域を測定した結果がこちら。
sRGBカバー率が100%、デジタルシネマ規格のDCI-P3が94%とほぼ公称値どおりの高い値が出ました。
さすが外部のCalMAN認証とPANTONEカラー認証を取得しているAQCOLORシリーズ。Adobe RGBもカバーする同社SWシリーズや、有機ELなど一部の“例外”をのぞけば、色表現で本機の右に出るものはないと言って良いでしょう。肉眼で見ても「ギラつき感」などは皆無で、ごく自然で鮮やかな発色に感じました。
モニターは工場で大量生産される工業品なので、値段の安い高いに関わらず少なからず品質にムラが生じるもの。しかし、色味の個体差を許さない「プロ向けモニター」である本機は、一台ずつ手作業で色精度のチューニング(キャリブレーション)が施されています。
手元に届く製品はすべてプロの手作業によって色補正されたものなので、仮にオフィス等で複数台導入する場合でも「いざ箱から出したらそれぞれ色にバラつきがある」みたいなことは間違っても起きないわけです。
解像度とHDR
PD2706UAの画面解像度は3,840 × 2,160ピクセルなので、Macから画面出力した場合の擬似解像度は1,980 × 1,080ピクセルが初期設定となります。
デフォルトだとやや表示領域が大きく非効率なので、ディスプレイ設定から解像度を2,304 × 1,296ピクセルに変えることでちょうど良いバランスになります。
また、PD2706UAはHDR10対応機種なので、Macの場合ディスプレイ設定から「ハイダイナミックレンジ」を有効にできます。
HDR10対応の動画やゲームはまだまだリッチコンテンツではありますが、最近だとYouTube上でもHDR撮影をした動画をよく見かけますし、編集用途でもニーズは高まってますよね。そうした背景もあって今回はDisplay HDR認証もちゃんと得ています。
ちなみに「ハイダイナミックレンジ」をオンにするとユーザーカラー設定は無効になりますが、OFFの状態だとHDRの恩恵は受けられないので必要に応じて有効にしてください。
MacBookとの親和性
Macとの相性がいい点もPD2706UAの特徴。
MacBookとの色差を抑えてくれる「M-Bookモード」は今作も健在ですが、実はデフォルトのままでも色味がMacBookに限りなく近いんですよね。
箱から取り出してそのままMacBookに接続すれば、これだけ違和感のない色が出せます(初期設定からいじったのは輝度だけ)。
「Mac推奨モデルと謳っているのにいざ繋いでみると全然色味がちがう・・」なんてこともざらにありますが、本機はそういった心配と無縁といっていいでしょう。
加えてUSB Type-C端子がPD給電に対応してるので、ケーブル1本つなげるだけで画面出力&PCへの給電が完結する点もMacBookと組み合わせやすいです。
また、前モデルは出力65W止まりだったところ、16インチMacBook Proユーザーにとってありがたい90W給電に対応したことも大きな改良ポイント。
モニターアームの可動範囲
続いてモニターアームについて。
PD2706UAに付属するアームは、自在に動かすことができるエルゴノミクス仕様というだけでなく、可動自体も非常に滑らかになっています。細かい位置調整もしやすいです。
壁際いっぱいにモニターを寄せることができますし…
ぐいっと手前に引き出すこともできます。
もちろん斜め配置も。
上下調整の駆動も滑らかで、好きな高さにピタッと固定できます。
チルト(上下の角度調整)は-5˚~30˚となっており、上向きは最大これだけの傾斜をつけることができます。
下向きだとこれくらいの角度になります。
ピボット90°にも対応しているので、PC側で画面の向きを変更することで縦配置もできます。
アームの可動域
- チルト(下/上): -5˚ – 30˚
- 首振り(左/右) :275˚/ 275˚
- 高さ調整 :150 mm
- ピボット :90˚
ちなみに、モニター裏からだらんと伸びるケーブルは全部このアームの中に隠せる仕様になってます。ケーブルマネジメントをあれこれ考えずデスクをスッキリ保てるのもこのモニターのメリット。
やっぱり便利なハブ機能
前述のとおり、モニター自体をUSBハブとして機能させることができるPD2706UA。
これはつまり、モニターのUSBポートに接続したデバイスが、自動的にPCと接続された状態になるということ。
特にMacBookにはUSB-Aポートが無いため、外部キーボードやマウス、SSDなど外付けしたいシーンで重宝するんですよね。メインモニターとして使うなら個人的には必須の機能かなと思います(一度これに慣れると、わざわざハブ機能の無いモデルを使おうって気がなくなるくらい便利)。
操作性
PD2706UAには「ホットキーパックG2」というダイアル付きのコントローラーが付属するのですが、このコントローラーが抜群に使いやすいんですよ。
明るさ調整やカラーモードの変更、入力切替えなど、モニターの設定が全部手元のOSDコントローラーで完結します。なのでモニター背面に手を伸ばして物理ボタンをポチポチ…みたいな手間はまったく必要ありません。
僕は部屋の明るさに合わせて画面輝度をコロコロ変えるので、ダイアルに輝度調整を割り当ててます。手前の「1,2,3」には好きなショートカットを記憶させられるで、僕はsRGB、M-book、ブルーライト軽減をそれぞれ割り当てて用途毎に画面モードを切り替えて使っています。
内蔵スピーカーの音質
PD2706UAはスピーカーを内蔵しているため、PC側の音声を出力させることもできます。
ただし、スピーカー性能は前モデルから据え置きの2.5W×2のステレオスピーカー、お世辞にも音質が良いとは言えません。2.1chスピーカー内蔵の同社EWシリーズと比べると、こちらはあくまで標準のステレオスピーカーといった感じ。
個人的にはMacBookの内蔵スピーカーの方が断然音質は上だと思うので、MacBookの外部ディスプレイとして本機を使うならスピーカーの出力先はMacのままにしておくのが良さそうです。
本機のような色精度に力を入れたプロモデルだとそもそもスピーカー非内蔵が普通なので、一応音が鳴るってだけでも機能としては十分ですけどね。いずれにせよ、動画視聴などで音質も重視するなら別途専用の外部スピーカーを用意するのが間違いないかと思います。
まとめ
デザインをはじめ、クリエイティブな作業をする人に嬉しい機能が盛り込まれたPD2706UA。外部の特許を取得しているだけあり色味の正確さは言うことナシです。
このモニター性能で価格約10万円って時点で十分コスパ良いんですが、さらにエルゴノミクスのアームまで付くとなると今後人気に火がつきそうな予感…。
今回レビューしたモニターアーム付きモデルに加えて、通常のスタンド型モデルも展開されているのでぜひ用途に合わせて選んでください。
アーム一帯モデル
通常モデル